90年代のシューゲイザー・ブリットポップ期を独特の感性と抜群のソングライティング力で独自の立ち位置を築きあげたバンド、The Boo Radleys。そのメロディセンスには自分も魅了され、最近も結構聴いていたのだけど、2020年にまさかの再結成。さらに2022年に再始動1作目を発表してから、わずか1年というハイペースで今作、8作目のアルバムがリリースされたので、せっかくなのでレビューを書いてみる。
前作は、再結成においてメインソングライターMartin Carrが参加しないという大きな逆境にも負けず、作曲はボーカリストのSiceを中心にメンバー全員で行っており、60sの影響が色濃く出たギターポップサウンドで馴染みやすいものだった。続く今作も同じくメンバー全員が作曲としてクレジットされており、かなり延長線上にあるという色合い強め。オールディーズへのリスペクトを感じるアレンジに、Siceの衰えを感じさせないハイトーンボイスが乗り、瑞々しいポップスサウンドを展開させている。また、代表作「Giant Steps」の再現ライブを控えているためか、所々で「あのころ」のレゲエ・ダブ要素が合わさったオルタナティブ・ロックサウンドが鳴っているのもファンには嬉しい。
…しかしながら、やはりMartin在籍時の、特に再結成前の後期における彼のソングライティングの円熟と、サウンドメイクに対する飽くなき挑戦を好んで聴いていた身からすると、どうも物足りなく感じるのも正直なところ。たしかにメロディは悪くはないのだが、「Find the Answer Within」「Kingsize」のように心に残り続けるメロディラインがあるか、「Lazarus」「Lazy Day」のような意欲的でありながら魅力的なアレンジがあったかと言われると、この直近2作には無かった、と言わざるを得ないのが残念だった。また、過去のアレンジに近いものを再始動2作目で改めて出されるというのがどうにもオリジナリティとしては欠けると思うし、よりMartinの不在を感じさせられてしまったという点もマイナスだった。この惜しい感じはSiceの96年のソロ作(Eggman "First Fruits")を聴いたことがあるファンならば想像がつくかもしれない。
再結成後のライブは動画を見るとSiceのボーカルはすばらしいし、自分の好きな解散前後期の曲もやっているので、いつか見てみたいとは思う。しかし、純粋に過去の経歴と切り離して今作を見ると、「好きな作品」とは言えなかったというのが正直なところだった。
再結成Booからは身を引いたMartin Carrだが、ソロとしては依然精力的に活動している。個人的には今作を聴いて彼の活動こそがBooだったと再認識してしまったので、今後もしっかり追っていきたいと思う。