2019 年は大江千里にどハマりした年だったけど、同時代に「3代男性 SSW」としてあげられる槇原敬之と KAN のほうは全然聴いていない、とくに KAN のほうは身の回りでも好きな人が少ないなと思ったので、サブスクリプションで配信されている作品を順番に聞きつつ適当な感想を書いていこうかなと思ったのでやってみた。

(そんな背景なので大江千里と比較する部分が複数ありますが、ほかに自分の中でわかりやすい比較点がないので名前をだしているだけであり、どちらかを貶めたいなど特に他意はありません)


1. 愛は勝つ

あの「愛は勝つ」。カノンを思わせる進行と分厚いコーラスワークで、なんか脳内で再生できるものと違う。クリスマスソングみたいだ。サビとほとんどサビみたいなコーラス、の2つを行ったり来たりするだけの展開なので、常にテンションが高い。アルバム一巡後にもう一度聞いてみると、この曲のリズムと展開のシンプルさが際立つ。

2. 恋する二人の 834km

軽快なシンセとリズム。コード進行はよくあるものの気がするが、サビ?の早口フレーズといい、?と書いた通り明確な J-Pop 構成じゃないのがいい引っかかりを作る。2 曲目で既に半音下がっていくコード進行が連続して登場していて、これが KAN 節か?

3. けやき通りがいろづく頃

大江千里を思わせるピアノバラード。これまた細かい転調にクセを感じる。ピアノからストリングスが入って大きくなっていくアレンジは力強いが、サビが終わり「けやき通り」についての歌詞に戻るとピアノに戻るアレンジは上手い。しかし中域は綺麗だけど、すこし高くなるとけっこう歪む声質だ。そして結構若く聞こえる。調べたら 62 年生まれなので、28 歳か。

4. 青春国道 202

シティポップ調の長いフレーズのシンセとファンキーなリズム。細かい転調、サビで元の調に大きくジャンプ。これも B メロの跳ねる節回しとしゃがれ方が大江千里を思い出す。

5. 千歳

リバーブ深めのギターとパッドにバラード、フレットレスベース。細かいコーラスワーク。8 分で刻むシンセのコードがトッドラングレンを思わせる。これもサビがくるのかと思わせてコーラスだけになるという珍しい構成。

6. Happy Birthday

再びファンキーなリズムにシンセベース。ソウルフルなコーラス。歌もキレのいい歌い方に。もっと日本語に重きを置いた感じかと思ってたけど、この曲とか特に日本後の発音も英語に寄せてる印象。このハーモニカ。ドレミの歌フレーズでアウトロ。

7. ぼくたちの Easter

これまたいかにもなサックスソロから始まるベタベタバラード。イースターの曲だけどクリスマスっぽい編曲な気が。前曲とつなげて聞くとちょっとくどい。

8. 健全 安全 好青年

ファンキーなリズムとソーシンセ、ポコポコシンセのシンセポップ。これは逆に日本語らしい発音とワード選びとスティーヴィーワンダー的な曲調のズレを楽しんでくれっていう感じ。「ああもう君を送っていかなきゃいけない時間だ ねぇ〜〜〜」がやばすぎる。個人的に KAN のイメージはこういう感じだった。

9. 1989 (A Ballade of Bobby & Olivia)

ピアノ弾き語りの入りから始まる、8 分にわたるバラード。かなり丁寧に恋人との出会いから別れまで描かれているんだけど、歌詞の内容と編曲のテンションが連動しているのがすぐわかってその点でも丁寧だなと。ただぶっきらぼうになるとすこし聞き辛い歌い方になるので、歌詞がすっと入ってくるかと言われると…。

10. 君が好き胸が痛い

引き続きピアノ弾き語り。ただこちらのほうがメロディが凝っていて好きだな。サビ後半のフレージングがいいし、C メロの展開もグッとくる。ただ再び高音のしゃがれが目立つ曲。大江千里の枯れ方にもなれたので、こちらも聴いているうちに慣れるのかも。


全体的には、ピアノを主軸にしつつもファンクや R&B を取り入れて、シンセで豪華にした曲、シンプルにピアノのみで形作った曲、凝ったアレンジのされた曲の 3 方向がアルバムで表現されてると感じた。プロデューサーとアレンジャーに納得がいかない、みたいな話が Wikipedia にあるが、割とこの人のベースはシンプルなアレンジが好きなんじゃないかなという印象。そのかわりコードワークや展開は結構複雑で、メロディの途中で度々転調するし、けっこう無理な展開もあるんだけど、ほかがシンプルだからかメロディの力か、けっこうすっと受け入れられた。そのへんが「KAN らしさ」として受け入れられてるのかな。

個人的な趣味で言えば、#1「愛は勝つ」はさすがの存在感だったし、#2「恋する二人の 834km」#4「青春国道 202」は大江千里ファンからするとシンパシーを感じるメロディと編曲、しかしサビのメロディは KAN 節、という感じがして結構好き。逆に#8「健全 安全 好青年」みたいな時代を感じる歌詞は、大江千里だと大丈夫なのに KAN だとすこしキツい。1989 みたいなストーリーテリング曲も僕はあまり…。

このアルバムだけで何度も聞き返すかというと微妙だけど、前半 4 曲は割と好き、という感じだった。