[編集中]。Dropbox に眠ってたのでとりあえず投稿しつつ加筆修正。


2016 年にリリースされた 2 枚のアルバムを聴き、続く 2017 年に追い討ちをかけるようにリリースされた「Flashes of Quincy」が傑作であったことに僕は非常に衝撃をうけ、思わず情報を探し回ってしまったのが、この Snowball II こと Jackson Wargo 氏についてだった。しかし、日本語ではもちろん、英語でも検索でイマイチ情報が出てこない。そこで、自分の備忘録として、また日本で彼についてもっと聴かれる機会が増えるように少ない情報をなんとか集めて記事を書いてみた。大した内容ではないが、誰かの参考になれば幸いだと思い後悔してみる。

Zero Feet Away

Wargo 氏の音楽経歴はどうやらこのバンドから始まったらしい。last.fmの紹介文によれば、バンドはカリフォルニア東部の街サイプレス(LA のすぐ東)で結成。メンバーは Jackson Wargo (vocals, guitar)、Jake Rodriguez (drums)、Shane Strachan (bass, vocals)の 3 人(+サポートギター?)。熱心なファンもいたようだが、2009 年に自主制作による唯一作「The Pledge」を残したあと、しばらくしてから解散していたようだ。

音楽性は Jimmy Eat World ライクなエモいパンクといったところで、オリジナリティはそこまで…。メロディもいかにもなポップパンクで、今現在の短いキャッチーなフレーズを繰り返すスタイルはあまり感じられない。担当は「Composer // Performer // Producer」とのこと。

Jackson & the Wargonauts

Zero Feet Away や It’s Only a Story としての活動がいつまでだったのかはわからないが、2013 年にはソロ名義や Jackson & the Wargonauts 名義でのライブを行っている。Wargonauts というのは Argonauts のもじりだろうから、Jackson と Wargo 号乗組員というところか。音楽性はポップパンクの影響を感じさせつつも、トラッドな雰囲気や多彩な楽器を取り入れた、より普遍的なポップロックになっている。例えるならば The Get Up Kids→The New Amsterdams のような変化だろうか。

Wargo 氏は曲作りからミックスまでなんでも自分でしてしまうようだが、マスタリングだけは Hurry EP の頃から現在に至るまで、Billy Centenaro 氏に一任している。彼は(多分)名門スタジオ The Village に所属するエンジニアで、Steven Tyler や Neil Young、Regina Spektor など名だたるアーティストのレコーディングでアシスタントエンジニアをする傍ら、インディーの無名バンドのテクニックも手掛けるサンフランシスコの良心的な存在。ギタリストやコーラス、スペシャルサンクスとしても記名されていることから、Centenaro 氏は Wargo 氏の音楽活動において大きな存在であることが窺い知れる。

Hurry EP (Jackson Wargo 名義) (2013)

この EP から、リリースは自身の"Doughnut Records"から…つまり自主制作なのだけど、Bandcamp を始めデジタルミュージックショップで手に入れやすいし、バンド時代より格段に音質がいい。

アコースティックギターが主体でソフトな肌触りの 4 曲が収録されているが、バンジョーやストリングスを取り入れてアレンジの幅は広く、どれも ZFA 時代より一皮も二皮もむけた充実度。曲作りと録音に 3 年をかけたと書いてあることから、バンド解散から試行錯誤を続けてこのサウンドにたどり着いたことがわかる。コーラスを担当している弟さんを始め、身近なミュージシャンの助力が多いらしい今作は、録音も Wargo 氏の実家でされており、内容共々非常にパーソナル。しかし、前述のようにメロディは練られているものの非常にポップで、少ない曲数からも彼のセンスがうかがい知れる佳作になっている。

The Summer’s Eye (2013)

サポートメンバーも数多く参加し、よりカラフルになったアルバム。ブラスもがっつりアレンジに取り入れ、エヴァーグリーンなポップスが完成している。録音はボストンのレコーディングスタジオを始め、かなり本格的に行われたようで、Centenaro 氏のミックス・マスタリングもあり素晴らしいサウンドが構築されている。このころには Snowball II に繋がるキャッチーなメロディセンスが開花しており、これがこのスタイルの Wargo 氏の完成形だろう。

AYE! or The Magnetic Fields’ “i” Covered & Reimagined by Jackson & the Wargonauts (2014) [Free]

全力を尽くしてフルアルバムを作り上げた次に Wargo 氏が取り組んだのが、多分に影響を受けているであろう The Magnetic Fields の名盤「i」を大胆にも全曲カバーするこのプロジェクト。原作の素朴な面を受け継ぎつつ、今まではあまり使われなかったシンセや打ち込みも取り入れたアレンジになっており、一筋縄ではいかないカバーになっている。しかしながら、どの曲も元のメロディが素晴らしい上に Wargo 氏の少しエモいボーカルと相性が良く、「i」を聴いたことのある人でも知らない人でも楽しめるアルバムだろう。

どうやら毎作やれる限りのことをしていまうのが Wargo 氏の信念らしく、前作、今作ときて、またバンド(Snowball II)で全く違う音を出してしまうのが惜しくも楽しい。

Snowball II

2013 年に「The Summer’s Eye」を完成させた Wargo 氏は、持てる限りのこだわりをつぎ込んでしまったためか、次の作品に思い悩んでいたように見える。2014 年の「AYE!」を制作したり、弾き語りのデモは引き続き録音していたようだが、まとまった活動というよりは企画的な色合いが強いことからもそれがうかがい知れる。そこで、心機一転して始めたプロジェクトが「Snowball II」だった。シュ—ゲイザーからの影響を隠そうともしないアレンジは、大学の同輩である Infinity Girl と、大先輩 Lilys の存在が大きいらしい(Infinity Girl は、2nd アルバムを 2015 年初頭に Topshelf Records からリリースしているシューゲイザーバンド)。他にも Harry Nilsson、BJM、Spacemen 3、デスキャブ、サリンジャーなど、恐らく学生時代に大きな影響を受けただろうアーティストを正直に挙げているところも好感が持てる。

現在、Jackson〜と同じように固定メンバーは明記されていないが、ZFA 時代のドラマー Jake Rodriguez や近隣に住むミュージシャンたちとタッグを組み、ライブ活動にも力を入れて活動しているようだ。2016 年 2 月の結成から一年間でアルバムを 3 枚を発表しており、しかも毎回スタイルが全く違うのだから彼の探究心と貪欲さを感じるばかりである。

シンプソンズの飼い猫から名前を拝借したのだろうバンド名に合わせてか、冗談めかしたタイトルをつけているものもあるが、どれも持ち味のキャッチーなメロディを活かしつつも、よく聞けばアレンジの凝りようや真面目さが見えてくる。今現在の Wargo 氏の好みが伝わってくるアルバムばかりだと思う。

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Doughnut Holes

Flashes of Quincy

コンピレーション参加

  • Practice Room Records - Secret Admirer (2016/02)
    • Disc 1-8. Desperation Club [Cloud cover]
  • The Blog That Celebrates Itself - Colorful Acts, In the Presence of Lilys (2016/07)
    1. Black Carpet Magic [Lilys cover]
    2. Day of the Monkey [Lilys cover]
  • The Blog That Celebrates Itself - Here Today, Gone Tomorrow, A Ramones Reverence (2017/03)
    1. Judy Is Punk
  • The Blog That Celebrates Itself - Spiritualized In Other Medications (2017/06)
    1. Hey Jane
    2. Anything More

エンジニア参加

  • It’s Only a Story - I Made You A Mixtape (2010) iTunes
    Performer, Engineer, Producer by Jackson Wargo
  • Will Gabriel - We’re Not Special (2015)
    Performed & Produced by Jackson Wargo and Will Gabriel
  • Mac Luster - The Joys of Missing Out (2016)
    Produced, Recorded, Mixed, and Mastered by Jackson Wargo at the Doughnut Shop, Cypress California
  • Dante and the Mirrors - Where They Go (2016)
    Produced by Tyler Taormina and Jackson Wargo
  • Black Sea - Disappointing Sunset (Burger Records 2017)
    Mastering Engineer