Day Wave - The Days We Had (2017)
オークランドの Jackson Phillips さんによるほぼソロプロジェクト。EP 群の評価が高い中での初のフルアルバムということで期待も高いが、それに答える完成度になっていると思った。思ったが、でもやっぱり EP にも収録されていた「Wasted Time」が名曲すぎて、次作ではもうひと押し欲しくなってしまった。でもそれをしてくれるアーティストだと思うし、次作も期待したい。
Todd Rundgren - White Knight (2017)
前作「Global」から 2 年と、ソロ 26 枚目キャリア約 40 枚目でも全く衰えることのない創作意欲の Todd Rundgren。「Global」と同年に発表されたコラボ作「Runddans」は、トッド流に現代ダンスミュージックを表した好作だったが、正直に言えば 10 年代に入ってから疎遠の SSW 的なトッドが欲しかったという気持ちも否めなかった。んだけど、この新作の直近 20 年くらいの総決算的内容には感服。これだけ錚々たるフィーチャリングアーティストを見てしまうと、彼らがメインになった楽曲をトッドが書く的なアルバムになってしまうのかと思ってたけど、開けてみればあくまでメインはトッドで、でも参加側も個性をしっかり出していて素晴らしかった。
Ben Wendel - Frame (2012)
Youtube に公開されているJulian Lage とのセッションを見た瞬間に恋に落ちたサックス/バスーンプレイヤー。とにかく音色が好みすぎるし、バスーンでもジャズをやっている人がいるとは思っていなかったのでもうそれだけでも好きになってしまった。また、音楽がすばらしいのもあるけど、プロモーションやコラボレーションの戦略に毎回意外性と納得度の高さがあって、広告に頼らずセルフプロモーションするのがすげー上手いなと思った。
柴田聡子 - 愛の休日 (2017)
柴田さん前作はなんとなくハマらなかったけど、今作はすごく良かった。なんでだろうと思いながら聴き直してみたら、やっぱり弾き語りが彼女の本質で、弾き語りの良さをうまくすくい取ったアレンジがされてると感じて、前作はそれが感じられなかったのが一番の理由だったのかなと思った。曲を作る時にどんな楽器を使っていたかっていうのは、やっぱり曲の根幹に関わってくるんだな。あとやっぱりアレンジばっかり聴いてるのかもしれない、僕は。
(Sandy) Alex G - Rocket (2017)
誰に評価されてるとか Bandcamp 発だとかで名前は見たことがあったけど、聴いたのは初めての Alex G さん。カントリー/フォークがベースの美しいハーモニーの後ろに、チラチラ狂気の影が見えるのが危うくて癖になるなーこれは。確かにローファイ宅録感のあるミックスだけど、アレンジはけっこうバンドでセッションしてて不思議な感じ。
Hazel English - Just Give In / Never Going Home (Polyvinyl Records, 2017)
この人も EP からじわじわ知られていった SSW で、容姿の端正さとそれに合ったビジュアルワークがまた素晴らしいのでそれは人気出るわという感じ。このアルバムは 1stEP に曲を追加してアルバム規模に拡大したような作品なんだけど、全体の統一感はとれていて違和感はない(ちなみにプロデュースは上の Day Wave さん)。まあやっぱりそれがマイナスとも言えてしまうのが今後の期待ポイントなんだけど…。最近 Polyvinyl はこういう儚い SSW みたいなのが増えてきてすごくいいと思います(Jay Som とか Julia Jacklin とか)。
ところで、こういうぼやけた音像とキャッチーなアルペジオにポップなメロのインディ SSW って Chillwave からの系譜なんだろうか。そりゃ好きだよという感じだ。
Paramore - After Laughter (2017)
大半の人が Paramore と聞いて連想するのはこういうFueled by Ramen! ジャッジャッジャー! っていうポップパンクだと思うんだけど(この曲じつは大好きだけど)、実は 4 年前の前作から Vampire Weekend や MGMT みたいなインディ成分が増えてきて、今作についてはもうポップパンクメインの曲はないといっても良い。というのも、どうやら結成時のリードギターが前前作で脱退して、曲作りとリードギターを元リズムギターの Taylor York さんが担うように鳴ったかららしい。前作の「Ain’t It Fun」みたいなハード要素も良かったけど、今作まで振り切れられたのはすごいと思う。あの世代のインディが好きならまずは聞いてみてほしい。
さユり - ミカヅキの航海 (2017)
関ジャニにあこがれてギターを始めたっていうエピソードが良い、SSW さユりの 1st フルアルバム。乱歩奇譚の ED テーマで聴いたのが初めてだと思うんだけど、一声聴いただけでわかるボーカルの力。Stereo Fabrication of Youth/la la larks の江口亮がメインで手がけるアレンジは、ちょっと聴き疲れするところもあるけどその世代の人々に刺さるアレンジでもあるし、なによりボーカルとのバランスで言えばベストだと思う。梶浦由記と野田洋次郎の楽曲提供とか、編曲を fox capture plan や雨のパレードも担当したりとか、そういう J-Rock 界隈的に気になるところもちょうどいい。「酸欠少女」っていう肩書とか二次元キャラがどうこうとか面倒な設定もあるけど、ポストニコニコ動画世代を全面に出している中ではかなり好きなアーティストなので、順調に売れてほしい…。