先日 Pitchfork エモ部門(?)ライターの Ian Cohen が自身の年間ベスト 50 をツイッターで発表していて、それが自分の好みにかなり近い上に知らないバンドやアルバムを含んでいて、一気に聞きたいやつが増えてしまった。


# Wild Nothing - Life of Pause (2016)

Wild Nothing は Captured Tracks の中でも人気の高いドリームポップユニットで、80s なアレンジとグッドメロディが毎回期待を裏切らない。特に今回はシンセとコーラスのアレンジが流暢で、ほかにも 80s で AOR ライクなバンドが溢れている中でひときわ「それっぽさ」「あざとさ」「WN っぽさ」が併存できていてすばらしい(Lady Blue とか Life of Pause とかやばい)。キャリアで一番好きなアルバムかもしれない。


# Thundercat - Bus in These Streets (2016)

Flying Lotus や Suicidal Tendencies、Kendrick Lamar、Erykah Badu などのサポートで知られる一方、ソロの方も好調な LA のベーシスト。サポート先がバラエティ豊かなので自身の楽曲はどんなものかと思いきや、70s ブルーアイドソウルなスムースボーカル&アレンジが気持ちいいどポップ曲が。この曲は Lotus Plaza がエディットなどしているらしいし、派手ではないけどツボを押さえたベースワークで、すばらしい完成度。


# Mitski - Puberty 2 (2016)

日本と米国のハーフで、現在 NY に在住しているらしいソロアーティスト。日本ではあんまり取り沙汰されている感じがしないが、前作で向こうのメディアの高評価を得、今作もいくつかのメディアのベストに挙げられているようだ。正直アレンジはかなりラフだし、宅録感もあるんだけど、それを感じさせないスケール感とドラマティックな展開がグイグイくる。ジャケは流行りのディーヴァみたいな感じあるけど、ジザメリみたいなオルタナ文脈っぽい曲もあるし、エモエモな曲もあって面白い。あまり似てないけど大森靖子のイメージに近い…かも?


# Minky Starshine - Pop Jewelry (2015)

Roger Joseph Manning Jr.が書いた曲があると聞いて知った(「Easier for Everyone」)。こういうパワーポップの甘いところ詰め合わせみたいなアルバム、嫌いなわけがない。どこまでもポップスの純度が高い曲たちでメロメロになれる一枚。


# Vulfpeck - The Beautiful Game (2016)

相変わらず懐かしポップファンクをコンスタントに生み出しているこのバンド。今回さらにメロディのキレがよくなって、アレンジの気持ちよさは据え置き。「Animal Spirits」なんて完全に MOTOWN で、本家にも負けないキャッチーさ。海外のおかあさんといっしょ的番組で流れてそう…というイメージ、だれか共有できないだろうか。


# Sioux Falls - Rot Forever (2016)

これも Ian Cohen リストからで、リリースはハズレなしと言っても過言ではない Broken World Media から。もう歌とか演奏とかラフですごいけど、完全にそれで正解なローファイ・エモバンド。ちょっと Post-Hardcore やスクリーモな要素もあるけど、なにより歌とエモい進行ありきだ!という感じが大変いい。Donovan Wolfington ぽさあるし、Braid とかの感じもある。


# Carousel Casualties - Safety (2015)

フィリピンのインディバンド。もう完全に日本人好みなアレンジとメロディで最高。ツボは外さないけどしっかりオリジナリティも感じるポップスで、休日外を歩くときとかに持ち歩きたい音。いま 1st アルバムを録音しているらしく、待ち遠しくて仕方ない。


# Gareth Diskson - Orwell Court (2016)

オーラブル・アルナルズなどの国内盤を出している Lirico というレーベルで知った。グラスゴー出身のギタリストで、Vashti Bunyan や Juana Molina などのサポートもしていたらしい。一聴してわかる Nick Drake 感の通り、「Nicked Drake」という名前でカバーアルバムを出したことのあるドの付くオタク。そんな人がオリジナルアルバムを出して悪いわけがないし、実際 ND 感満載ながらも、現代の周辺アーティストから受けたっぽい空間処理やアレンジも見える。


# Luke Temple - A Hand Through the Celler Door (2016)

NY のバンド、Here We Go Magic の中心人物による 5 枚目のソロアルバム。もはやバンドより枚数が増えたアルバム数が示す通り、熟練のフォークシンガーの貫禄がある。アメリカの郊外を思わせる牧歌的なところや、ちょっとつかみどころがない異国の地を思わせるメロディなど、シンプルなアレンジ・編成だけど聴かせるアルバム。個人的にはバンドよりこっちの方が好き。


# Posture & the Grizzly - I am Satan (2016)

これも Ian Cohen リストから&BWM リリース。どまんなかエモ・ポップパンクバンドで、アレンジもそのへんを聴いてる人はニヤリとせざるを得ないんだけど、じゃあ焼き直しでつまらないかというと全くそんなことない。心からエモが好きで、バンドをやらないと生きていけない!みたいなのが伝わってくるからだろうか。正直こういうのは食傷気味だったけど、やっぱりエモ最高だなーと再確認できたアルバム。