寒くなってきたから寒い曲、と思ったけど、普段からそんなのばっかり聴いてた。


# Shugo Tokumaru - TOSS (2016)

トクマルシューゴは常に前衛的な姿勢を取ってきたのだと思うけど、いつも前衛的なのが逆説的に金太郎飴的だという不当な評価を受けていると感じることがある。というか、僕も少なからずそういう視点で聴いてしまったところがあった。しかし、制作に 4 年をかけたという今作は、そんな評価もはねつける強い音楽だと思う。先に顧客からの要求がある商業音楽に対して、「求められていない」ことをやったらしいが、その反発力と彼のポップセンスのバランスが丁度良くて、今のトクマルシューゴにやってほしい音楽がそのまま形になったようなアルバムだと思う。


# Steve Gunn - Eyes on the Lines (2016)

先日 Steve Gunn 氏の周辺アーティストとして挙げた Nathan Bowles も引き続き参加している最新作。Matador からリリースということで期待が高まるが、高まったままの気持ちで OK なドリーミーフォークポップ。Kurt Vile とスプリットアルバムを出したことがあるのも音楽性のイメージにつながるかもしれない。アルペジオとドローンの隙間に聴こえるピアノやバンジョーがちょうどいい塩梅すぎて。Bowles さん本当に良い仕事するな…。


# 青葉市子 - マホロボシヤ (2016)

5 枚目のアルバム。音楽性に変わりはないけど、どんどん研ぎ澄まされていく静けさと緊張感。前作からメジャーレーベルである Speedstar に所属したのだけど、録音は良くなっても必要のない音は入れない。言語センスもメロディセンスも独特だけど、誰にでも受け入れられるだろうところがすごい。


# Babaganouj - Hard to Be (2016)

レコード屋の宣伝文句がいかにもなテンプレで、実際その通りのサウンドなんだけども、楽曲クオリティが高い。しばしば男女ボーカルで、ジャケットがシンプル。Pains of ~?Veronica Falls?いやバブガニューシュです!……。本当に曲がめちゃくちゃ良くて、ガレージ感とドリーミー感のバランスもベストで、こういうバンド組みたいの代表みたいな最高のバンド。インタビューでは『―メンバーはそれぞれどんな音楽に影響を受けてきましたか?/Ruby は The Ramones で、Harriette は Alvvays や Wolf Alice だし、ぼく(Charles)は Teenage Fanclub だね。」という発言もまた「そのまま」で最高。個人的には Velocity Girl とそのメンバーが創始者である Slumberland Records を連想せずにはいられなかった。


# Terry Malts - Lost at the Party (2016)

という流れで、その Slumberland Records の最新リリースである今作。Terry Malts は前々作くらいまでガレージすぎてとっつきづらい印象があったけど、徐々に音像が整理されて録音もよくなってきて、持ち前のソングライティングが前面に出てきて良い。Babaganouj は若さ爆発!だけど、こっちは渋さもありつつジャングリーポップ!というような。オリジナルパンクの要素を入れたパワーポップをやりたい、というようなコンセプトということで、それが分かりやすい。


# The Notwist - Superheroes, Ghostvillains + Stuff (2016)

1 時間 40 分に及ぶライブ版。The Notwist はフォークトロニカ+ヒップホップというイメージだったけど、ライブがこんなにも身体的でカッコいいなんて…。もちろん上に挙げた要素はあるし、音源から完全に変えているわけでもないけど、生演奏の要素がかなり増えていて、身体が自然に動く。


# サカナクション - 多分、風。 (2016)

狙いすました 80 年代感があらゆる要素に感じられるけど、誰が聴いてもサカナクション。そして 2010 年代の音楽。かなり意識的に編曲や言葉を選んでいるようで、実際その通りに機能していると思う。僕はこの曲がすごく好きなのだけど、正直メロディは今までのサカナクションそのまますぎるし、全く覚えられない。けどなんでか好き。その強制力みたいなのがすごい。何の力なんだ…。ところでこの曲は資生堂「ANESSA」の CM ソングとしてサビだけ先行して作られていたわけだけど、その内訳もイントロのシンセフレーズ 10 秒サビ 5 秒という構成で、やっぱりボーカル(メロディ)を聴かせる意図があまりないんじゃないかと思って、その狙いができるバンドすげえと思ったり。


# Surface To Air Missive - A V (2016)

ジョージア州アセンズ出身の Taylor Ross 氏によるユニット(フロリダ出身の 4 人組とは多分違うアーティスト?)。先行リリースで公開された「Full Love Wonder」をシンガーソングライター徳永憲 氏がブログに書いていたので知った。一筋縄では行かせないぞ?という姿勢がそのまま音に現れてるメロディ・アレンジがクセになる。ベースとか何をやりたいのか全くわからないが、それが良い。というか徳永ブログ、面白いアーティストばかり紹介していて、かなり信用している。


# David Mead - Indiana (2004)

ナッシュビルで活動しているシンガーソングライター。Wikipedia 曰く「opening shows for John Mayer, Fountains of Wayne, Ron Sexsmith, Liz Phair, Joe Jackson, and Shelby Lynne」で、「second album, produced by Adam Schlesinger (Fountains Of Wayne)」ということなので、この中に一つでも知っているアーティストがいたら間違いないアルバム。なにも特別なことをしているアルバムではないけど、聞き覚えのあるフレーズから一歩先を行くメロディセンスが素晴らしすぎて言葉もない。アレンジもメロディを最大限まで引き出してるよなあ…。最近はソロ活動こそしていないようだが、Elle Macho というパワーポップバンドで 2nd アルバムをクラウドファウンディングしたり(1st が Apple Music にある)、カバーバンドを組んだりして活発に動いてはいるらしい。


# American Football - American Football (2016)

今年から活動再開し、ついに 17 年ぶりの 2nd アルバムが出たエモバンド。Mike Kinsella のプロジェクトは多岐にわたるけど、多分世間的には知名度がある…っぽい。個人的な話をすると、彼の音楽を聴いた順番が Owen→Joan of Arc→Cap'n Jazz→American Football→Owls→One Up Downstairs→Their/They’re/There で、思い入れも聴いた順という感じなので、そこまで熱狂的に迎えられたわけではない。しかしながら、やはりソングライティングの中心を Mike が手掛けているだけあり、静かに盛り上がりつつ心の弱い所をがしっと掴んでくるエモ感は変わらず最高。繊細なアルペジオが持ち味ですみたいなフォロアーは星の数ほどいるけど、本物はやっぱりすごいと打ちのめされているんじゃないだろうか。みなさん。恐らく 1st から一番変わったのは Mike のボーカルが太くなったことと、それを活かしたミックスになっていることかなと思う。というか、意識的に 1st の要素を入れているのかな。あえて各バンドのカラーを大切にしつつも自分の音楽性は曲げない!という姿勢がかっこいい。


# Drugdealer - The End of Comedy (2016)

ボルチモア出身の Michael Collins さんのユニット。ローファイ&リバーブ特盛な Run DMT (Salvia Plath)として Domino 傘下 Weird World からもリリースしていた彼。またもやドラッグと名前に入れてしまった(DMT と Salvia はドラッグの名前)新プロジェクトのデビューアルバムを同じく WW から。あれだけブワンブワンいっていた音像はすっきりサウンドになり、まるっきり 60 年後半 SSW なアレンジに。というか Laura Nyro ~ Todd Rundgren、Joni Mitchell、ビートルズそのままなんだけど、それを隠そうともせず、シンセのブラスであることも隠さずがっちりソロという風通しの良さ。でメロディは良い。変な人だ。